1.2 主要筋肉系と解剖学的分類

牛の筋肉は解剖学的に以下の3系統に大別される:

1.2.1 体表筋(ひょうひきん)

皮膚直下に位置し、皮膚を動かす薄い筋肉群。食肉への利用価値は低い。

1.2.2 固有背筋群(こゆうせききんぐん)

最長筋(さいちょうきん、Longissimus dorsi)は食肉として最重要の筋肉である。

最長筋の重要性:脊椎に沿って頸部から腰部まで連続して走行する最長筋は、全身で最も長い筋肉であり、「ロース」「リブロース」「サーロイン」の主体を構成する。日常的な体重支持にのみ使われ運動量が少ないため、筋繊維が細く柔らかく、霜降りが入りやすい部位となる。

1.2.3 体肢筋群(たいしきんぐん)

筋肉名 位置 対応する食肉部位 運動量 肉質傾向
最長筋 背部〜腰部 ロース・リブロース・サーロイン 低 柔らか・霜降りあり
腰筋(大腰筋) 腰椎腹側 ヒレ(テンダーロイン) 極めて低 最も柔らかい
腸骨筋 腸骨前部 ヒレ後端 低 柔らか
三角筋 肩峰部 ミスジ(チャックテンダー) 中 やや硬め、筋あり
菱形筋 肩甲骨内側 肩ロース 中 中程度
深胸筋 胸部深層 ブリスケット 高 硬め・コラーゲン豊富
大腿二頭筋 後肢外側 シキンボ・マルカワ 高 硬め・赤身強い
半腱様筋 後肢後内側 シンシン(eye of round) 高 硬め・赤身
横隔膜(柱頭部) 胸腹境界 ハラミ(Skirt Steak) 高 独特の食感・旨味豊富

第2章:部位別詳細解説